私は、。演劇部に入っています。けれど、私の学校の演劇部は、少し変わっているんです。先輩が引退した後、一週間ほど休みになるのです。なぜか、と言うとその間に、次期部長や副部長などを決めるからです。それで、私は今、男子テニス部を見に来ているのですが・・・。
「お前ら、グラウンド20周だ!」
「跡部部長、そない走らんくても、えぇんとちゃいますか?」
「ホント、侑士の言うとおりだぜ!」
「・・・40周でもいいんだぜ?」
「はいはい。走らせてもらいます。」
「くそくそ!・・・あっ、じゃん!も、何とか言ってやれよ。」
男子テニス部の部長になった、跡部先輩。それに正レギュラーの忍足先輩に向日先輩。私は、一応、跡部先輩と付き合っていて、その繋がりから男子テニス部の人とは、仲良くなりました。それで、忍足先輩や向日先輩とは、付き合う前にも話したことがあったので、特に仲が良くなったのです。
「頑張ってくださいね。」
「岳人。そら、アカンわ。ちゃんは跡部の味方やで。」
「さっさと、15周走ってこい!」
「さっすが、跡部!よし、行くぜ、侑士。」
「おおきに、ちゃんのおかげやで〜。」
そう言いながら、忍足先輩と向日先輩は走っていきました。
「ったく・・・。」
もう何ヶ月もやっていて、すっかり部長の仕事にも慣れた様子の跡部先輩は、部員の甘やかし方も慣れたようです。
「くすくす・・・。」
「お前。何、笑ってんだよ。」
「何でもないです・・・!跡部先輩も頑張ってくださいね。」
「当然だろうが。・・・・・・そうだ、お前。今日は、先に帰っとけ。」
私は、てっきり怒られるのかと思ったのですが(笑)、予想外の言葉が返ってきて、少し、返事をするのに、遅れてしまいました。
「・・・・・・あっ、はい。・・・何か、あるんですか?」
「今日は、寄る所があるから。」
「それぐらい、待ってますけど・・・。」
私は、少し待って、跡部先輩と帰れるなら、待つことなんて、何も嫌じゃないので、「待ってます」と言おうとしました。けれど、跡部先輩に待って欲しくないようなことがあるのかもしれないと気付き、あえて語尾を「けど」にし、跡部先輩の気持ちを聞こうとしました。
「熱々やな〜。」
「跡部、待っといてもらえよ!」
そこに、一周し終えた忍足先輩と向日先輩が、ちょうど通りかかり、そう言いました。
「お前ら、2人。20周だ。」
「悪い、悪い。許したって!」
「だから、15周な!」
そう言って、忍足先輩と向日先輩は、2周目を走っていきました。
「とにかく、今日は先に帰っといてくれ。」
「・・・?はい。」
詳しくは聞けませんでしたが、跡部先輩が言いたくないかもしれないので、これ以上は聞かないことにしました。
「それにしても・・・。」
先に帰った私ですが、まだ納得できず、考えながら歩いていました。すると・・・。
「どういうことだ?きっちり、話してもらおうじゃねぇか。」
何やら、怖そうな人が怒鳴っていました。
「そっちが勝手に勘違いを・・・!」
「ヒドイわ!勘違いだなんて!」
「(あれって?!)」
そこには、橋山先輩とこの前の女性がいました。
「コイツは、お前に騙された、って言っていた。」
「そう、騙されていたの!私は、前からあなたが好きだったの。だけど、この人が絶対幸せにする、って言ったから、最初は迷ってたけど、結局この人についていったの。だけど、それは嘘だったのね?!」
「そんなことは言っていない。俺には、前から好きな人がいた。」
「そんな・・・!嘘よ!」
「テメェ、嘘つくんじゃねぇ!」
「そっちがついてるんじゃないのか。」
「なに〜!」
なんだか、大変なことになっています・・・。けど、自業自得だと思うんです、橋山先輩・・・。と言うより、あの女性も嘘を言っていると・・・。「前からあなたが好きだった」って、あの人を利用しようと思っているのでは・・・。あの人も、かわいそうですね・・・。
「・・・そうだ、テメェ。前から好きな人がいた、と言ったな。・・・・・・そいつを連れて来い。そしたら、少しはお前の話、信じてやってもいい。・・・連れて来れたら、の話だけどな。」
「いいだろう。」
あぁ・・・。橋山先輩・・・。あんなこと言って・・・・・・。本当にいるんでしょうか?まぁ、橋山先輩だし、いるかもしれないですけど・・・。
「・・・・・・・・・・・・。」
「どうした?電話してもいいんだぜ?」
「わかってる。」
「いないんでしょ?はっきり謝ればいいのよ?・・・まぁ、50万は払ってもらうけど。」
ご、50万?そんな、いくらなんでも、それは・・・。
「そうだ。いなかったら、50万払ってもらうぜ。」
「橋山君、こんな所で何してるの?」
「・・・!君は・・・!」
しまった・・・!つい、出てしまいました・・・。しかも、あの女性にわからないように、同い年を演じてみたんですけど・・・。・・・ばれますよね?
「誰、この子?」
ばれてません・・・!
「この人が、俺の好きな人だ。」
さすが、元演劇部。アドリブもばっちりですね・・・。
「・・・どうしたの、橋山君。急に・・・。」
「この人が勘違いして、俺と付き合っていた、なんて言うんだよ。」
「勘違いじゃないわ!」
「でも、橋山君は、前から私と付き合っていました。」
「お前、コイツと演技してるんじゃないのか?」
「違います。そんなことしても、何の得にもなりませんから。」
本当に、得にならないのに、私ったら・・・何をしているんでしょうか。
「もう、どうだっていい。コイツが騙されていたことには変わりねぇ!」
「だから、騙してなんて・・・!」
「うるさい!」
「きゃっ!」
・・・痛い・・・・・・。どうすればいいんでしょう?私が入っても、意味が・・・・・・。
「・・・おい、お前。一体、何してるんだ?」
この声は・・・。でも、どうしてここにいるんですか、
「跡部先輩!」
「。何してんだよ、こんな所で。」
「跡部先輩こそ・・・!」
「跡部・・・。・・・・・・?はっ、思い出した!あの時の!道理であなた、見覚えがあるわけね。」
ついに、ばれてしまいました・・・。
「やっぱり、あなた達、彼の言うとおり、演技してたんじゃない。ねぇ。この子、コイツの好きな人なんかじゃないわ。だって、こっちの2人が付き合っているんだもの。コイツから聞いたわ。」
「なんだと!やっぱり、騙していやがったのか!」
どうしましょう!跡部先輩まで巻き込んでしまって・・・!
「おい、お前ら。さっきから、コソコソしてねぇで、出で来い!もう、わかってんだから、手伝え!」
「跡部先輩・・・?」
一体、誰に話しかけているのか、と考えている時・・・。
「いや〜、ばれとったんか〜。」
「なら、早く出てやればよかったな。」
「忍足先輩に向日先輩!」
そこには、忍足先輩や向日先輩に・・・・・・。
「ホント、跡部の奴、激ダサだぜ。」
「ついてきた、俺達も激ダサですが・・・。」
「でも、が助けられて、結果オーライ!」
「ウス。」
「こんなことがあるんじゃないかと思ってね。俺って、やるねー。」
「(どうだか・・・。)まぁ、芥川先輩の言うとおりですね。」
「みなさん!」
宍戸先輩に鳳君、芥川先輩、樺地君、それに滝先輩や日吉君まで来ていました。
「忍足や向日、宍戸、ジロー、滝までは想像していたが、お前らまで来ているとは・・・。」
跡部先輩も、ここまで大人数で来ているとは思わなかったようです。
「とにかく、樺地、鳳、日吉が来たことは助かる。力のある樺地と鳳、古武術が得意の日吉がいれば・・・。」
跡部先輩はそう言って、怖そうな人の方を見ました。
「な、なんだよ。」
「さっき、俺のを殴ったの、覚えているよな?」
「だけど、あれは・・・!」
「行け、お前ら!」
「まかせとき。」 「まかせとけっての!」 「しゃーねぇなぁ。」 「さんを助けられるなら。」 「ワックワクするなー!」 「ウス。」 「行くよ。」 「・・・・・・仕方が無いですね。」
「逃げるぞ!」
「ちょ、ちょっと・・・!」
そう言って、怖そうな人とあの女性は帰って行きました。
「・・・みなさん、本当にありがとうございます!」
本当に、みなさんがいなかったら・・・、と考えると、とても恐ろしいです。・・・なんて無茶をしたんでしょうか、私は。
「。」
跡部先輩の声は、少し怒ったような声だったので、私は思わず謝りました。
「・・・すいません!」
「・・・・・・バカ。心配させんな・・・。」
そう言って、跡部先輩は私を抱きしめました。
「跡部先輩・・・。」
「なんで、こんな奴のために、あんな無茶したんだよ。」
「それは・・・。・・・後のことを考える前に、助けないと、と思ってしまって・・・。」
「、まだコイツのこと・・・。」
「違います!私が好きなのは、跡部先輩です!」
私は、つい大声で言ってしまって、その後に街の中だということに気付きました。
「あっ・・・・・・。」
「ホント、見せ付けられちゃったなぁ。・・・ちゃん、今日は本当にありがとう。これからは、俺も気をつけるよ。」
橋山先輩は、そう言うと足早に去っていきました。そして、みなさんもいないということに気付きました。
「あれ・・・?みなさんは・・・・・・。」
「アイツら・・・。わざと・・・。」
跡部先輩が何やら、みなさんに怒っているようなので、私は話を変えてみました。
「そういえば、跡部先輩。どうして、ここにいるんですか?今日は、寄る所があるって・・・。」
「・・・まぁな。」
「・・・?」
跡部先輩は、まだ隠しているようでした。
「その用事は、もう終わったし、帰るか。」
「はい・・・。・・・どうしても、教えてくれないんですか?」
私は、気になって、もう1度聞いてみました。
「明日には、わかる。・・・帰るぞ。」
私も、それ以上は聞かずに帰りました。けれど、本当はとても心配でした。橋山先輩に会って、寄る所って、他の女の人の所じゃないだろうか、と考えてしまったからです。ふられるのかな、そう思いながら、私は次の日を迎えました。
「おい、。」
「あっ、跡部先輩・・・。・・・おはようございます。」
私は、いつものように言えませんでした。
「どうした?・・・・・・まぁ、いいが。ほら、これ。」
そう言って、跡部先輩は私の方に何かを放りました。
「・・・これは?」
「お前。今日、何の日か知らねぇのか。」
今日は・・・・・・。でも、知っているはずはないと思うのですが・・・。
「・・・私の誕生日、ですか?」
「自分の誕生日、覚えてねぇのかよ。」
「でも!どうして、私の誕生日を・・・。」
知っているんですか、そう聞こうとしたとき、それに答えるかのように、誰かが言いました。
「跡部の情報力をなめるなよ。」
「跡部の奴も、かわいらしいこと、しよるわ。いろんな人に、ちゃんの誕生日を聞いて回ってたんやで。」
そう、向日先輩と忍足先輩でした。
「お前らは・・・、いつもどこから・・・・・・。」
「跡部先輩・・・!」
そして私は、忍足先輩の話を聞いて、思わず、跡部先輩に抱きついてしまいました。
「・・・!・・・。」
「ありがとうございます・・・。」
そう言って、私は泣いていました。
「何を考えてたか知らねぇが、昨日は、これを買いに行ってたんだ。」
跡部先輩は、私を励ましてくれようとしているのか、そう言ってくれました。
「・・・そう・・・だったんですか。」
私は、安心して、より強く跡部先輩を抱きしめていました。
「・・・?」
「す、すいません・・・!」
跡部先輩に呼ばれ、やっと我に返った私は、すぐに跡部先輩から離れました。
「それを聞いて、安心したら、つい・・・。」
「昨日、俺が何をしたと思ってたんだ?」
「・・・・・・他の女の人の所かと・・・。」
「・・・あのな。少しは、俺を信用しろよ。」
「すいません・・・。」
「・・・ったく。」
そう言いながらも、跡部先輩は、私を抱きしめてくれました。
「見せ付けられてしもたな、岳人。」
「だな。」
「・・・テメェら。まだ、いたのか・・・。」
「さぁ、そろそろ行こか。岳人。」
「行こう!」
「逃げられるとでも、思ってんのか?」
跡部先輩は、口ではそう言っていましたが、追いかけようとはせずに、ずっと私を抱きしめていてくれました。
「・・・本当に、すいません。」
そう小声で言うと、跡部先輩は言いました。
「そんなことは、絶対にしないって誓っただろ?」
「・・・はい、すいません。」
「まぁ、思っちまうもんは仕方がねぇ。・・・これから俺が、そんな考え出来ねぇようにしてやるよ。」
そう優しく言ってくれました。私は本当に跡部先輩が好きでよかった、と思いました。
跡部先輩、大好きです。
← Back Next →
このヒロインが気に入って、何だかまた書いてしまった、番外編です。
いやぁ、自分で書いておいて、何ですが(笑)。この大人しくて、弱々しくて。でも、意外としっかりしている真面目な子っていうのが可愛くて・・・。
っていうか、女の子って可愛いですよね。もちろん、お姉様な女性も素敵ですけどね。
・・・いや!そういう趣味は無いですよ?!本当!!(笑)
あと、この話でレギュラー陣が登場しますが。
お前らは暇なのか?!って話ですよね(笑)。しかも、あの宍戸さんや日吉くんまで、来ているなんて・・・。
意外の意外です(笑)。